詳細・ビジネスへの影響
法務省の有識者検討会 「肖像、声等の無断利用による民事責任の在り方に関する検討会」 は、生成AIの普及に伴い深刻化する著名人の声や肖像の無断利用に関して、民事上の責任を明確化する報告書(指針案)を公表しました。本指針は2026年8月にも最終取りまとめが行われる予定です。
指針案の最大のポイントは、これまで法的な定義が曖昧だった「声」について、顔や名前と同じく「個人の人格を象徴するもの」として、パブリシティ権や人格権から導き出される「みだりに利用されない権利」による保護の対象に含まれると明確に位置付けた点です。声優の声を無断でAI学習させ、歌唱させたりセリフを喋らせて収益化する行為は、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償や差止請求(削除請求)の対象になり得ることが示されました。
実務上の極めて重要な注意点として、本指針は「新たな法律の制定(立法)」ではなく「現行の民法解釈の整理」である点が挙げられます。新法を作るわけではないため、法律の不遡及(過去の行為に新法を適用しない原則)は適用されません。したがって、指針公表前にアップロードされた過去のAI無断生成データであっても、現在もネット上でアクセス可能な公開状態にある場合は、継続する権利侵害として「差止請求(削除)」の対象となり、また時効にかかっていない過去の行為について「損害賠償請求」を受けるリスクが存在します。
このため、企業やコンテンツ制作者は、今後の新規制作物だけでなく、過去に制作して現在もネット上に公開したままになっているコンテンツについて、他者の肖像や声を無断利用したAI生成データが含まれていないかを早急に総点検(棚卸し・チェック)する必要があります。
現在も第三者がアクセス可能な公開状態である限り、過去の投稿であっても法的な差し止めや損害賠償のリスクが存続するため、必要に応じて非公開化や削除などの予防措置を講じることが強く推奨されます。
