米Anthropicの生物学研究チームは、同社のAIモデル「Claude」を研究パートナーとして活用し、これまで真核生物にしか存在しないと考えられてきた巨大な樽型の細胞内構造体「ヴォールト粒子(Vault particle)」を原核生物(細菌・ファージ)の世界から発見し、その3次元構造を世界で初めて実験的に解明したと発表しました。
ヴォールト粒子は1986年に哺乳類の細胞内で発見された中空の巨大タンパク質複合体ですが、40年近く経過した現在も正確な生物学的役割が謎に包まれており、構造が複雑で改変が難しいため研究が難航していました。研究チームはClaudeを用いて約150億件の予測タンパク質データベースを解析し、29の細菌門と4つの古細菌門にわたる膨大な候補の中からヴォールトに似た構造を作る遺伝子配列を特定しました。
さらにClaudeは、遺伝子配列の探索だけでなく、大腸菌を用いたDNA設計や実験プロトコルの最適化にも深く関与しました。特にタンパク質の精製工程においては、従来であれば約3日間を要していた複雑な手順をわずか90分程度に短縮する実験手法を立案し、クライオ電子顕微鏡(Cryo-EM)による画像解析パイプラインの構築までを一貫して支援しました。
その結果、バクテリオファージ由来のタンパク質「L05」が96個の同一コピーで球状のナノカプセル(約54.5×47.5ナノメートル)を自己組織化している姿を原子レベルで捉えることに成功しました。Anthropicは、Claudeが途中で鏡像の反転ミスや添加剤の選定ミスを起こし人間の研究者が修正した経緯も透明性をもって公開しており、AIと実験科学者の協働によって創薬の薬物送達(ドラッグデリバリー)用ナノカプセル開発などが大きく加速すると期待されています(一次ソース:Anthropic 公式発表)。
